
日之影の眠れる文化財に光をあてる、文化財調査のお仕事。
文化財や史跡などを訪ねて、心を動かされる体験もあれば、少し物足りなさを感じてしまうこともある。
その違いはなんだろう。
事前の予習や知識がなくてもわかりやすい掲示があったり、言葉の説明は最小限にとどめつつ、五感で場所の魅力を味わえるような仕掛けや動線の工夫がなされていたり。
その場所らしい「体験」や「体感」がデザインされているかどうかが、重要な気がします。
宮崎県日之影町ではじまろうとしているのは、文化財の調査・研究の推進です。
国指定の重要文化財から、町指定の有形・無形文化財まで幅広い文化遺産が眠っている日之影町。
今回は、日之影町に残る有形・無形文化財のことを発信したり、展示に関するアドバイスであったり。さまざまな形で活用方法を考え実践していく地域おこし協力隊を募集します。
一緒に事業を進めていくのは、日之影町教育委員会のメンバー。
歴史や文化に関心があって、人との距離感が近い地域の雰囲気が好きな人にとっては、おもしろい仕事だと思います。
2021年に建設された日之影町役場新庁舎の2階、日之影町教育委員会を訪ねる。
町産材をふんだんに使っている木の温もりが感じられる庁舎。
今回話を聞いたのは、日之影町教育委員会の佐藤さん。今回の地域おこし協力隊の担当職員の方。
「日之影町は、登山や釣り、キャンプやボルダリングなどアウトドアが非常に盛んなまちです。ボルダリングはここ数年で全国的な知名度も上がってきて、多くのボルダーがまちを訪れてくれるようになりました」
「でもじつは、アウトドア以外にも活用できる資源をたくさん抱えたまちでもあるんです」
たとえば、国の重要文化財に指定された旧綱ノ瀬橋梁及び第三五ヶ瀬川橋梁。深い渓谷の入口に架かる、現在は廃線となった高千穂鉄道の橋。
鋼材の使用が制限されていた時期に、当時の鉄道省が最先端の技術を駆使して完成させたものであり、近代コンクリート構造物の技術的到達点の一つとされている。
「現在は森林セラピーの遊歩道として、観光資源としても活用しています。もっと様々な発信、活用方法を模索しています」
学会では、セーヌ川に架かるサンミシェル橋にまさるとも劣らないという評価も得ているそう。
「日之影の資源は多大なるポテンシャルを秘めている、その実感はしています。ただ、いざ活用するとなると資源をうまく活用しきれなくなる。まちの資源としての価値を高めて、より広く知っていただくための仕掛けを一緒に考えていきたいです」
今回入る協力隊の方には、文化財などの調査・研究をお願いするとともに、文化財資源の更なる発掘や魅力が多くの方に伝わる情報発信など、さまざまな形で日之影の文化財を活用する方法を考えていってもらいたい。
日之影の文化遺産は、形あるものだけではない。
無形民俗文化財として残っているのが、深角団七踊り。
深角団七踊りは、刀・鍬・長刀(なぎなた)・鎖鎌・短刀などを使い仇討ちの様子を演ずる「踊り手」に、「太鼓・音頭・囃子」などがついて、勇壮に踊られるもの。
団七踊りは、全国各地にも伝わっているが、『深角団七踊り』のように1段から12段までの歌舞伎の段物と同じ形を残して、現在も踊り続けられているものは珍しく、芸能の成立及び地域的特色を示すものとして貴重だそう。
現在は、深角団七踊り保存会により8月のお盆の時期に奉納されている。
他にも、九州で唯一の農村歌舞伎である大人歌舞伎、日之影神楽も宮崎県の無形民俗文化財の指定を受けている。
大人歌舞伎は春公演と秋公演の2回。以前は大人神社の秋の例大祭時のみ上演していたが、演技力向上目的に春にも上演するようになったそう。
「大人歌舞伎の公演がいつありますって発信はもちろんなんですけど、練習の過程を一緒に見たい、体験したいっていう人も必ずいると思うんです」
「たとえば、本物の衣装を着れる体験会や実際に本番同様のお化粧ができる体験会などを開催したり。それが演者として興味が出てくるきっかけになるかもしれない」
地域で当たり前に続いてきたことも、外から訪れる人にとってはとても貴重な体験になる。
大人歌舞伎や神楽などの伝統芸能は、もともとは収益を得るためにはじまったものではない。ただ、伝統を継続していくためにも、文化財を観光に活かしていくことも必要ではないだろうか。
「文化財って、維持するだけで終わってしまうと厳しいというか。“文化ツーリズム”として事業化することで魅力的に後世に残していけるのではないかって思うんです」
訪れる人の視点からしても、保存整備された文化財や披露される伝統芸能をただ見るだけでなく、少しでもその輪のなかに混ざって“体験”できると、記憶に深く刻まれるし、いい思い出になる。
そうして地域にもお金が落ちるようになれば、経済的な面でも持続可能になっていくのではないか。
「魅力的な地域資源はいっぱいあります。これから入ってくれる方が、どう地域に溶け込んでその資源を活かしていくか、一緒に考えていきたいです」
他にも、活かしきれていないものがある。
見立地区にある「英国館」。英国人、ハンス・ハンターにより、見立鉱山の英国人技師の社交と宿泊の場として建設され、鉱山の盛衰の歴史を見守ってきた建物。
日本建築と洋風建築を併せた、当時としては珍しい独特の建築様式で、ハンス・ハンターが残した建物の中でも現存する数少ない貴重な建物の1つだという。
英国館は、まち中心部から約40分程かかる場所にあり、道路が狭い箇所も多い。
「当時使われていた縄編みのイスがそのまま残されていたり、木造の建物の中に欧米式のバスタブが設置されていたり。建築やデザインを職にしている人にとっては、かなりのインスピレーションを受けるのではと思っています」
「文化財ごとに非常に詳しい住民もいますが、高齢化もあり、その知見が後世に残っていかないことを懸念しています。住民とコミュニケーションを取りながら、知見を吸収していってほしいですね」
活かせそうな文化財も、アイデアや知識もたくさんある。すべてを実現するこことは難しいし、これから入る人がワクワクすることから取り組めばいい。
頭でっかちに考えるよりは、いろんな人の協力をあおぎながら、どんどん動いて実践できる人が向いていると思う。
「文化財や伝統芸能への関心はもちろんある人の方がいいですけど、活かし方は既存の発想にとらわれてほしくないですね。知識を補足したり、人を紹介したりする面ではサポートできるので、好奇心を持って活動できる人がいいですね」
粛々と企画を立てて、思い描いた通りに進めていきたい人には、ちょっと苦しい環境かもしれません。活かしたい文化財もたくさんあるし、その活用法には無数の可能性があるので、なおのこと。
脱線も楽しみながら、転がっていた先でアイデアを掴み、まずやってみる。
文化財の新しい活かし方を考えるには、そんな柔軟な思考と行動力が必要なのだと、話を聞きながら何度も思いました。
まずは、実際に現地を訪れて“文化”を見て“未来”を考えてみませんか?
■ご応募はこちらから■
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募集要領
1 募集人数
1名
2 募集条件
(1)年齢は問いません。
(2)性別は問いません。
(3)居住地要件があります。
3大都市圏及び地方都市(条件不利地域※ 以外)にお住まいの方(詳細はお問い合わせください。)
※ 条件不利地域とは①~⑦で指定する地域
①過疎地域自立促進特別措置法
②山村振興法
③離島振興法
④半島振興法
⑤奄美群島振興開発特別措置法
⑥小笠原諸島振興開発特別措置
⑦沖縄振興特別措置法
(4)地域おこし協力隊着任後、住民票を異動できる方
(5)普通自動車運転免許を所持していること。(AT限定可)
(6)日之影町内に居住し、町民と協力した活動や多様な主体と協働で地域活性化活動に熱心に取り組むことの出来る方
(7)暴力団員による不当な行為の防止等に関する法律(平成3年法律第77号)第2条第2項に規定する暴力団その他反社会的団体又はそれらの構成員に該当しない方
(8) 地方公務員法(昭和25年法律第261号)第16条に規定する、各号に該当せず、心身ともに健康で、誠実に業務を行うことができる方
3 任期
着任日から1年間
なお、更新は1年単位とし、最長で3年間とします。
※ただし、1か月間を条件付採用期間とします。また、地域おこし協力隊員としてふさわしくないと判断した等のときは、任用期間中であってもその職を解くことができるものとします。
4 身分・報酬
日之影町の一般職の非常勤職員(会計年度任用職員)となり、次の条件のとおりです。
(1)報酬(月額) 220,000円(ただし、月途中に着任した日から日割り計算します。)(2)手当等 町の規定により、期末手当・勤勉手当、通勤手当相当分の費用弁償を支給し ます。
(3)保険等 共済保険に加入します。
5 住宅・活動用物品
(1)住宅
任期中の住居は町内にある住宅を借り上げ、隊員に無償で貸与します。生活備品等については各隊員でご用意ください。
(2)活動用物品
活動で使用する公用車及び備品等は、無償で貸与します。
6 勤務日・勤務時間・休暇
(1)勤務日
それぞれの就労規則により勤務することになりますが、原則として月あたり20日程度
(2) 勤務時間
原則として1日あたり7時間又は週あたり35時間以内とします。
(3) 休暇
有給休暇については、労働基準法に準じます。
その他町の規則に基づき、夏季休暇、忌引休暇、結婚休暇等の特別休暇があります。
7 募集期間
令和7年5月1日から令和8年3月31日まで
(定員に達し次第募集を締め切らせていただきます。)
8 選考について
(1)1次選考:提出いただいた書類を基に書面審査を行います。
①提出書類
・応募用紙(別紙)
・市販の履歴書
・作文(A4用紙 400字以内):「地域おこし協力隊として自分ができること」
②提出方法
郵送にて、下記提出先へ提出してください。
(2)2次選考
日之影町にて「面接」を行います。
日時等は、1次選考結果を通知する際にお知らせします。
(3)結果通知
2次選考後、おおむね10日以内に結果をお知らせします。
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