2021年、ある秋の日、日之影おこし隊の座談会。
長澤美元さん
重信誠さん
小野満陽光さん
日之影おこし隊

ここでは、便宜上、地域おこし協力隊のかたも緑のふるさと協力隊のかたも、どちらもひっくるめて「日之影おこし隊」と呼ばせていただくこととしましょう。みなさん、この日之影のまちになにかしらの興味をもって、それまで暮らしていた他のまちからわざわざこのまちを訪れ、実際にこのまちの暮らしを体験しながら、なんらかの方法でこの町に元気を与えようと活動してくださっています。本当にありがとうございます!

重信誠さんは、3年間の任期終了を目前に控えている時期。小野満陽光さんと長澤美元さんは、2021年4月から始まった1年限りの任期の折り返し地点をちょうど過ぎたくらいの頃。それぞれがそんな時期を迎えているある秋の日、日之影にどんな想いを抱いているのか話していただきました。その記録の一部を紹介します。

日之影ライフに潜むのは
自然の四季を感じる豊かさ?
それとも暮らしの不便さ?

重信ふつうの若者が日之影のまちに暮らしてみれば、正直、住みづらいと感じるでしょうね。一軒しかないスーパーが18時に閉まると知ったときには、自分はショックすぎて泣きそうでした(笑)。買い物は不便だし、クルマがないとなにも楽しめないまちでもありますし。

長澤私が生まれ育った愛知の豊橋市は、延岡よりもすこし大きいくらいのまちですけど、なんでもあるわけではなくて、なにか買い物にいくとなれば名古屋とか浜松にまで出るのがふつうでした。だから、なんでもある便利なまちじゃない、っていうのは私にとってはかえって懐かしくて心地いい感じです。

小野満ぼくもふだんの生活での不便さはほとんど感じていません。日之影での移動はぼくの場合はもっぱら原付で、冬の間はさすがに軽トラに乗るつもりですけど、夏なんかは日之影の山道を原付で走るのは最高に気持ちよくて楽しいですよ。

長澤ここに来るまえに暮らしていた東京では、なにもかにもモノで溢れていて、それがあたりまえすぎて、楽しみがなくなっている感じがしたんです。人もものすごく多いから、いろんな出会いをくれる反面、冷たい人もすごく多いと感じるし。それが日之影に来てからは、人のあたたかさを感じますし、四季の移りかわりを自然が感じさせてくれます。山の色、旬の農作物、空の感じ、そしてお花、そういうものが季節の移ろいを語りかけてくれるというか。そういう生活は自分にとっては初めてで、とても気に入っています。

毎朝の通勤で見える景色のひとつ。その日の天候、時間帯、気温、季節によって毎回違うように見えて、霧がかったところに見える様子も、朝日を浴びて影になる様子も、大きく存在感のある橋だから変わらない景色なのに毎日違うように見えるのが季節の移り変わりを感じられてとても好きです。(文・撮影:長澤さん)

小野満ぼくの場合、不便さを感じないのは、そもそもお金を使わない生活をしているから、ということもあるかもしれません。ふだんの食事も、お手伝いさせてもらった農家さんからご馳走になる、という感じなので。それに、どうしても必要なものがあれば、Amazonでいいわけですし。ただし、場所によっては電波が通じないというのが、スマホ依存度の高い人にとっては少し不安なことかもしれないですね。

日之影にどんな面白さや楽しさの
可能性を見出せるだろう?

小野満大学院で田舎を研究対象とした研究をしているのですが、でも、こんなに山の奥にまで来たのは自分としてははじめての体験でした。ようやく日之影にたどり着いたときは「すっごい山のなかにあるなぁ! こんなV字渓谷なんてそうそうあるもんじゃないなぁ!」と本当に驚きました(笑)

絶景に囲まれたSUP最高です!!(文・撮影:小野満さん)

長澤私は以前から、伊勢神宮によく行ったり、神様ってなんだろうって考えたり、神話に触れる機会があったりして、そういうところに興味があったので、「宮崎県で、高千穂も近くて、めっちゃ面白そう!」とわくわくした気持ちで日之影に来ました。岩井川神社などまちの神社巡りもしましたし、神話や日本史にも触れられて、毎回いろんな発見があるのが楽しいですね。いまは観光協会のお手伝いをしているのですが、ときどき「西郷隆盛が通ったという『天の古道』ってどこですか? 案内してくれますか?」っていう問い合わせがあるんです。神話や日本史に興味のある人にとっては日之影のまちはすごく興味深い場所だと思います。

重信ぼくは地域おこし隊としてこのまちに来てからずっと、日之影の雲海ハンターをやってきました。日之影の雲海はとても美しく見事で、となりの高千穂にある雲海の名所として全国的にも有名な国見ヶ丘にも全くひけをとらないとぼくは思っています。それで日之影の雲海を発信していこうと、YouTubeに動画をアップしたり、この「おかげさま日之影ライフ」にも掲載したりしてきました。雲海というのは条件が揃わないとなかなか見られないものなので、見られたときはすごく感動的なんです。いまいち反応が弱かったのがちょっと残念でしたけど。

日之影町のシンボル「青雲橋」とゆらゆら泳ぐ鯉のぼりの風景が大好きです!(文・撮影:重信さん)

長澤観光協会でふるさと納税のサポートもしているのですが、日之影は農業も豊かでいいものもたくさんあるんです。でも、一方で、規模が小さくて生産量も決して多くないので、ちょっと塩梅がむずかしいんですよね。PRするにしても、PRしすぎてしまうと注文がたくさん入ってしまい、そうなると対応できなくなってしまうので…。そのあたりは、少しもどかしく思うことがありますね。

追伸

任期を終えたみなさんのその後は?
重信さんは、日之影に定住し、個人事業を継続し日之影のまちづくりに携わる予定。
長澤さんは、地域おこし協力隊の任期を更新し、引き続き町のふるさと納税業務に従事。
小野満さんは、休学していた大学院に復学し、日之影に残りリモートでゼミに出席。日之影を研究フィールドに修士論文を執筆する予定。
それぞれの日之影ライフは続いていきます…!

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