山の斜面の
美しき茶畑にて。
甲斐一心さん、鉄也さん
一心園

日之影の山に
美しい茶畑が広がる

見事な景色だ。ここは、日之影町七折地区に広がる、一心園の甲斐一心さんご家族の茶畑。青々とした茶葉が綺麗に列をなし、まるで幾何学模様のような風景をつくりだしながら山の斜面を覆い尽くしている。絶景である。

甲斐さんは、かつては、田んぼや牛などを生業とする農家だったのだそうだ。しかし、そこから方向転換し、30年ほど前からお茶の栽培と販売に力を注ぐようになったのだという。じぶんで育てたものを直接消費者に販売できるようにしたい、と考え抜いた末の決断だったという。

そうして、お茶農家になることを決意した甲斐さんは、じぶんの雑木山を茶畑に変えていった。山に重機は入らないので、もっぱら手作業で山を切り拓いていった。木を伐るのも、根を掘り起こすのも、お茶を植えるのもすべて人の手でやっていったのだという。ものすごいパイオニア・パワーで、風景を劇的に変えたのだ。

自家製堆肥を使い、
有機JAS認定も取得

今は息子の鉄也さんが仕事を受け継いでいる。ここで育てる一心園のお茶は化学肥料を使わない。もみ殻や干草などでつくった自家製堆肥を使用し、無農薬で育てており、有機JAS認定を受けている。春には一番茶、夏には二番茶、そして秋冬番茶を収穫する。

一心園のお茶は、日本古来の製法である「釜炒り茶」である。現在の日本では生産量がとても少ない、稀有なお茶。香りよく香ばしさがあるのが特徴である。その他、茎ほうじ茶、釜炒り抹茶、紅茶、玄米茶も製造販売している。香ばしくもすっきりとした味わいで全国にファンを持っている。

山の斜面は
日之影の財産

日之影は山のまちというだけあって、自然の恵みが山の斜面を覆っている。そのひとつが、まさにこの甲斐さんの茶畑なのだ。管理も茶摘みも平地であればもっとラクにできただろうに、山の斜面であるがゆえに、肉体にも負担がかかるし、あらゆる仕事の難易度があがってしまう。そんな大変な環境の中で、一心園はいいお茶を育て続けている。

山の斜面に、太陽の陽射しが注ぐ。山の斜面に、大きな気温の寒暖差が生じる。山の斜面から、清冽な川の水が流れゆく。あらゆる自然条件を活かし、山の斜面の茶畑で、いいお茶を栽培してきた。

一朝一夕にはできない、どこの誰にも真似されることのない、歴史と知恵が刻まれたこれら山の斜面の風景がここにある。これこそ、日之影の素晴らしさ。美しき山の斜面の風景。もちろん、それをつくり、守り、営んでいるのは、そこに暮らす人の手なのである。

一心園

住所 宮崎県西臼杵郡日之影町大字七折9323
Web http://www.issin-en.com/

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