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どんな場所でも腕が良ければ大丈夫。所谷英紀さん年齢33歳髪切屋ライティング
2021年2月18日。日之影町七折地区の元気村に、髪切屋ライティングがオープンした。店主である所谷英紀さんが、接客もカットも掃除も経理も、店に関わるすべてをたったひとりでこなす完全予約制の店。開店から1年近くのときを経て、腕のいい美容師の店として知れ渡るようになった。日之影はもちろん、延岡からも、高千穂からも、日向からも、宮崎市からさえも、定期的にお客さんが訪れてくる。それは、カットや接客、サービス、店の雰囲気づくりといった一つひとつに確かな技術と品質の裏打ちがあるという事実とその価値に気づいたお客さんによる口コミが、自然なかたちで広がっていった結果だ。そんな状況について所谷さんは「思っていたよりもずっと多くのお客様にお越しいただいていることは素直に嬉しいですね」と笑う。
名古屋で美容師の道へ。
厳しいなかで学び続けた12年
中学までを日之影で過ごし、その後は宮崎市で高校生活を送った。電気工だった父の跡を継ぐかもしれないと電気科を選んだが、高校卒業後に進んだのは美容師の道だった。
「日之影には帰りたくない、外に出たい、という想いがありました。それで、名古屋で美容室をひらいている叔父のもとへ行きました。そこで働きながら、通信制の美容学校で学ぶという生活が始まります。先輩より早く来て、掃除して、朝練して、店がオープンしたら店が閉まる夜10時まで働いて、それからまた練習して。休みになれば学校に行って…、という毎日。お金もないし、友達もいないし、本当にキツい日々でしたね。それをなんとかやり通すことができたのは、とにかく負けず嫌いの性格だったからということと、『人間どっかで苦労せんといかん』という父の言葉が頭のなかに響いていたからだと思います」
21歳の頃には、中部地方の美容師400人が技術を競う大会で、ベスト8にまで残り、賞をもらうまでになっていた。職場でもお客さんから少しずつ指名をもらえるようになり、一目置かれる存在になっていった。それでも慢心することなく、常に新しい壁を見つけて、学ぶことをやめることはなかった。もっとよい接客をするには、もっと喜んでもらうためには、といつも考え続け、試行錯誤を繰り返した。
「もちろん技術も大事ですが、どこまでお客さんのことを考えるか、ということがいちばん大切だと思うんです。このひとはどうやって髪を乾かすんだろうとか、ドライヤーをどう使うとより綺麗になるだろうとか、トリートメントをどう使うといいだろうとか、とにかく必死になってそのひとのことを考える。そういう姿勢がお客さんに伝わっていくものだと思うんです」
どんな悪条件の場所であろうといい技術と接客と雰囲気を提供してみせる
名古屋で12年が経っていた。日之影に帰るきっかけは突然訪れた。29歳の時、父が亡くなったのだ。「宮崎に帰る飛行機の中で、母が一人になったことを想い、もう日之影に帰ろうと決めていました」。
日之影に戻ってからしばらくは延岡にある美容室で働いた。そこで仕事をしているうちに、じぶんの店をひらくことを真剣に考えるようになり、物件を探し始めた。
「店の場所は、大きな道沿いでも、山奥でも、どこでもよかったんです。どんな不便なところでも、そこにわざわざお客さんがやってきてくれる店にしたい、そういうチャレンジがしたい、と思いました。いい技術といい接客といい雰囲気を提供できたら、きっとお客さんは来てくれる。もし来てくれなかったら自分の腕をもっと磨けばいいだけ、と思っていました。
実際いまの場所に店をひらくことに決めたら、『え?日之影で?』『人口3千人のまちでどうやって経営するの?』みたいな反応をもらいましたね。それで内心ますます『みとけよ…!』って思いましたね」
そして、オープンから1年を経た現在。知る人ぞ知る人気店になったことは、すでに前述したとおりだ。
「この『ライティング』という店名は、日之影に由来します。日之影とは『陽の差すところ』ですからね。そしてもうひとつは、父が電気工だったから、です。この店で、価値を感じてもらえるだけの接客技術をしっかりと提供し、この先10年、20年と続けていきたいです。やがては、美容師という仕事の素晴らしさを次世代にも伝えていきたいし、受け継いでくれるひとも育てていきたいなぁ、と思っています」
髪切屋ライティング
住所 日之影町大字七折2511-6
Web www.instagram.com/lighting_hinokage/
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