おかげさまで 日之影 ライフ

かつて、日之影のまちに、雑貨店はまったくと言っていいほど見当たらなかった。さらに宮崎県の県北一帯にまで視野を広げてみたとしても、やっぱりほとんど見当たらなかった。今から5年ほど前、平田ひかりさんがかねてからの念願であったじぶんの雑貨店「Conne（コンネ）」をひらくことに決めたのも、そのような空白の状況だったから、というのがひとつの大きな理由だった。ひとつもなかったがゆえに、そして誰もやるひとがいなかったがゆえに、じぶんでやってみればいいじゃないかとシンプルに考え実現することができた。そして、そういうチャレンジをしたことによって、いまこの店はこのエリア一帯においてほぼ唯一の、ひときわ稀有な存在となって、今日まさにこの瞬間にもたくさんの人を吸い寄せている。
日之影町七折地区、国道218号沿いにある「日之影元気村」の一角に佇むその雑貨店Conneに伺い、どうしてこの店をひらいたのか、その想いと物語を、店主・平田ひかりさんにお聞きした。

静岡、東京を経て、
日之影での暮らしを選んだ

「私はもともとは静岡出身です。地元を離れ、専門学校に通いながら東京で暮らしているときに、友人からの繋がりで、日之影出身であるダンナと出会いました。はじめて日之影のまちに遊びに連れてきてもらったのは、まだ結婚する前のことで、たぶん20歳の頃だったと思います。まるで日本昔ばなしみたいな風景と生活ぶりに『日本にはまだこんな暮らしがあるんだ！』と衝撃を受けたことを覚えています。そして『こんなにも優しいひとたちがたくさんいる場所なんだ！』ということに感動もしました。

ダンナとはそののち、25歳の頃に結婚しました。そして東京に暮らしている日々のなかで東日本大震災が起きて、あの大きな揺れを体験してしまったことが、東京を離れるきっかけになりました。そもそも子供を育てるなら日之影みたいなところがいいなぁと思っていたこともあって、『よし、これはもう、日之影に住もう！勢いのある20代のうちに行ってしまおうよ！』と私からダンナに提案したんです。それで2012年、東京から日之影に移住してきました。

とはいえ、実際に来てみたら、日之影にはなんにもないわけです。そこで私が思ったのは、『なんにもないんだから、なんでもできるんじゃね？！』ということでした」

なんにもない日之影、
だからこそなんでもできる！

「私は昔から雑貨がすっごい好きで、原宿のエスニック雑貨店でアルバイトしたりもしていたんですけど、いくら好きだからといっても東京で携われることといったら、せいぜいバイトとして関わるくらいまでですよね。『じぶんで店をもつなんて絶対ムリ』って思ってました。

でも、日之影でならどうなんだろう。そもそも雑貨店がないんです。それで、『ないんなら、じぶんでやっちゃえばよくない？』って前向きにとらえることができました。

ということで、まずは代々木のフリマに出るくらいのかる～い感覚で、『ひのかげ渓谷まつり』に出店してみることにしました。ハンドメイドのアクセサリーとか、エスニック雑貨とか洋服とか、そういうものを集めて販売してみよう、と。そうして実際にやってみたら、店を出しただけで面白がってもらえたり、『見てるだけでなんだか元気になるね』と言われたりして、すごく喜ばれたんです。それ以降、なにかイベントがあるたびにテント張って店を出すっていうことをやるようになって、移動販売スタイルができあがっていきました。イベントに出ると、また次の企画にも『出店しませんか？』って呼ばれるようになって、次へ次へと繋がっていく…。それで私もますます楽しくなっていきました」

「そんなとき、2015年頃ですが、日之影100人会議『ヒノカフェ』が開催されました。まちの未来とじぶんのこれからを考えるワークショップだったんですね。それに参加したことがきっかけで、それまでの移動販売でなく、店を持ちたい、と考えるようになりました。『じぶんの店があれば、もっと日之影の観光案内とかおいしいものとかPRできるのになぁ…』と思ったんです」

「そんな夢が加速して、とうとう、縁あってこの『日之影元気村』に店をひらいたのは、2017年のことでした。店には、エスニック雑貨をメインに、日之影生まれの商品も並べています。天然石とかパワーストーンとか、エネルギーを与えてくれるものがたくさんあります。そこにあるのを見てるだけでも元気になるようなもの、みんなが喜んでくれるもの。そういうものをぜんぶひっくるめて『幸福雑貨』って呼んでいます。

ここでモノを売るだけじゃなくて、ここから日之影の魅力を伝えたり、ここでワークショップしたり、ここをみんなが集える場所にしたいんです。そして、すこしでも日之影の元気、日之影の幸せに役立てたら嬉しいですね」