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美味なるものを
伝え続ける。田中省二さん年齢74歳居酒屋 左近
日之影の美味を
知り尽くしたひと
田中さんは、太陽と橋と渓谷の町・宮崎県日之影町に店を構える居酒屋「左近」の店主で、日之影生まれ、日之影育ちのひと。幼い頃から美しい川や大自然のなかで遊び回り、カニやエビ、鰻など川に棲む魚や生き物たちの生態を知り尽くしてしまった、川漁の名人でもある。
鮎やヤマメの釣りシーズンの始まりには、全国から弟子たちが集まってくるほどの腕前をもつ。「左近」では、そんな田中さんが獲ってきた天然の食材がしばしば料理として提供され、地元の人たちはもちろん、旅行者たちを喜ばせている。
生き物を「描く」ことも田中さんのライフワークで、五ヶ瀬川に泳ぐ鮎の姿を石に描いた作品は、日之影の様々な場所(町の誰かの家とか)で見ることができる。
田中さんのお店「左近」は町でイベントがあれば打ち上げで貸し切り状態ともなる。しばしば隣町の延岡市や高千穂町からもお客さんが集まるほど人気のお店でもある。もしこのお店を訪れたいなら、あらかじめ予約をしておくのが望ましいだろう。
季節の素材、季節の味、
土地の素材、土地の味
「えっ!これは、、、何?!」っていうような驚きに出会えるのが、ローカルの食卓の素晴らしさだろう。せっかくそこを訪れた旅人なら、その土地にしかないようなものを食べてみたいと思うもの。
それが高級かどうか、なんてことより、面白いかどうかが大事。ふだん見ることのできない地域食材とか、地元のおばあちゃんの手づくりの郷土料理とか、その季節のその土地なら地元の人には当たり前すぎて何でもないようなモノこそ、ローカル感とスペシャル感漂う最高の食事になる。だから、左近にいきたい。日之影を旅したら、左近さんでどんなものに出会えるだろう。
初夏なら例えば、天然ヤマメの天ぷら。カリッと香ばしく、身はホロホロとして実に美味。ゴーヤとワタと種の天ぷら盛り合わせ。旬の味わいを閉じ込めて揚げた揚げ物たちは、とにかくジューシーで旨い! もしかしたら、天然の鰻。身はもちろん、頭までベロンベロンに舐めながら食べるという経験ができるかも!
それらは前もって約束された食事ではない。天候次第だったり、漁次第だったり、いろんな偶然によって出会うことができるものなのだ。
一期一会の味わいと
一期一会の出会いを満喫
店主の田中さんは言う。
「川の状態が良かったらね、おれがもう最高に面白いところ連れて行ける。夜のラクマエビ突きがおんもしろいですわ。水の深さがね、膝よりちょっと低いぐらいの流れのないところで、懐中電灯で探していったら目が「キラーッ」て光りますわ、エビの目が。それをカナ突きで上からコツコツって突いていくとですよ。
ヤマタロウガニもいいね。味も見た目も、カニのなかでは一番おいしい。ただ、小さいからめんどくさい、味噌から、足の爪の先まで、ほじくるのに。絶品ちゅうのは、そのカニをですね、甲羅を剥いで、小さく半分くらいに切って臼で突いて、ぐっちゃぐちゃに潰すだけ潰したら味噌を入れて一緒に混ぜてまた突いたのを大鍋で煮る。煮えたらそれを大きなザルに空けて、また別の鍋に移してそれを漉すんです。カニの殻やらは全部そのザルに残るんですよね。下の鍋に移ったつゆに白菜とか野菜を入れてそして炊き直してそしてそのままおつゆで食べるんですね。これはな~ん杯でも食べたくなるほどの絶品です。
クマバチは、目をつぶって口に入れたら、いっぺん食べた人はもう病みつきになりますね。見た目はちょっとね、ああいう虫を口のなかに入れるちゅうのは抵抗がある人はなかなかムリかもしれんけど。成虫は唐揚げです。高温の油でばーっと揚げてそしてシオを振って食べるんです。これはもうエビセン感覚です。カリカリになるから。針も刺さっても気にならんです。
だんご状のクワガタの幼虫みたいなあれが幼虫です。あれがもうちょっと大きくなってさなぎの格好になったのが真っ白の乳白色になったのがおります、これが一番おいしいですね。それはボイルしてザルに上げて、シオ振って食べるんです。食感は「ぐちゃーっ」ちゅう感じです。その味がもうたまらんです。これはもう最高においしいよ。
じゃ、あとは、お店で待ってます」
居酒屋 左近
住所 宮崎県西臼杵郡日之影町七折3187-1
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