名産探索
「ひのかげの柚子」
佐藤文昭さん(集落支援員)

もぎたての果実でつくる、
幸せの黄色い柚子こしょう

山の斜面にしっかり根をはる木々に実る、色あざやかな黄色い柚子。以前取材に伺った、見立地区の工藤晃一郎さんの柚子畑も然り、日之影町らしい山の彩りです。
宮崎県の中でも、柚子の産地として知られる日之影町。ゆず酢(果汁)、ゆずジュース、柚子柿、柚子みそなどなど、ゆずの味わいを楽しむ特産品が多く並ぶ中で、種類も多く人気なのが柚子こしょうです。町のほとんどの家庭の冷蔵庫に常備されているという柚子こしょうは、作ったり、買ったり、もらったり…と日常の食卓に欠かせないものであり、地元のみやげものとしても人気。道の駅青雲橋でもおいしい柚子こしょうは買えますが、今回は特別に、地元の柚子を使ったフレッシュな柚子こしょうを作ってもらえることに。作ってくれたのは、日之影で集落支援員として日々町の人々と関わる佐藤文昭さんです。2022年の春から緑のふるさと協力隊として着任している菊浦美宇さんにお手伝いいただきながら、柚子こしょう作り体験のスタートです。

文昭さん「町内のイベントや小学校で、柚子こしょう体験をしているんです。小学生とは、晃一郎さんの畑に行って柚子を収穫するところから始めて、柚子こしょうや柚子シロップ作りをしています。地元の特産品を使って、子どもたちと食の体験ができればいいなと思って。小学生でも柚子こしょうを食べる子は食べますよ(笑)。でも一緒に柚子ジャムも作ることが多いので、両親へのおみやげにする子が多いですね」

この日も、晃一郎さんの畑で収穫してきてくれた黄色くて大きな柚子の実がたくさん。柚子こしょうの作り方は驚くほどシンプル。収穫した柚子を洗い、皮をむいてある程度水気を取り、皮をフードプロセッサーにかけてみじん切りに。そこに塩と砕いた唐辛子を入れて練り上げて完成。素材の味がおいしさに直結するのだと実感します。

文昭さん「今日は黄色い柚子で作るので、赤い唐辛子を入れます。唐辛子も日之影で自家栽培したものです。青柚子の場合は、青唐辛子を入れますね。塩は柚子の皮の量の約18~20%を目安にして。入れすぎるとしょっぱくて、少ないと傷みやすいので、その狭間の塩分が適切だと…テレビ番組で言ってました(笑)でも、本当にこれくらいが美味しいです。食べた箸など入れなければ、冷蔵で3年くらいは持ちますよ」

日之影町内の集落支援として、日々さまざまな活動をしている佐藤さん。柚子こしょう作り体験もその活動のひとつだと言います。

文昭さん「以前は、もっと集落の方々も元気だったので、誰かが何かやりたいことがあれば手助けをしたり、人を呼んでイベントがしたいと言えば企画をしたり。今は高齢化が進んでなかなか難しくなってしまったので、集落の方々の様子を見に話を聞きに行ったり、なにか困りごとがあったら役場につないで。そういった地域の見守りのほうにシフトしています。

支援している集落が“水源の里”に指定されているのですが、晃一郎さんの農地も指定地区ということもあって、こうして一緒に活動しています。以前からイベントごとが減っている中で、コロナウイルスの蔓延でさらに人が呼べなくなってしまった。でも、このままでは衰退していくばかりになってしまうので、少しでも自分たちから発信していこうと思い、こうして水源の里の集落の特産品を使って、子どもからお年寄りまで参加できる体験をつくっています。今は柚子と椎茸がメインですが、ほかにも何かできないかと常に考えています。そういった地元のものを通じで町の人とのつながりを作っていけたらと思うんです」

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